無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

 その後、夕食に入ったフレンチのレストランで、宙はユキにもらったボールペンを手に

サラサラと住所と電話番号、メールアドレスそして鈴木とコースターに書いて、ユキに渡した。



 でも宙は、ユキには何も聞かなかった。

 実は知っているからという理由があることなどユキは知る由もないが

鈴木のようにスラスラと教える気にはなれなかった。


 住所は青木家になる……

 それにユキの名字は朝霧(あさぎり)という珍しい名字だったのだ。



 食事を終えて、外に出て、

 人が疎らになった街路樹の影に立ち止まってキスをした。



 もう帰らなきゃいけない。


――シンデレラ城の鐘が鳴っている



 どうしようもなく寂しい気持ちに押しつぶされそうになって宙の瞳をみつめると、

ふと白く落ちる物が目に留まった。


 雪だ。
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