無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
「やっぱり降ったね」
ユキは空を見上げながら
「ユキって呼んで、私のこと」
呟くようにそう言った。
「じゃあ またね ユキ 」
送らなくていいと言ってタクシーに乗り、
事情を知っている宙はそれ以上は何も言わずタクシーを見送った。
今生の別れじゃあるまいし、と思っても、
見送る宙の姿が小さくなるにつれ込み上げる想いが涙となって溢れてくる。
吸い付くようにしっかりと宙の手と繋がっていたはずの手が、
迷い子のように小さく震えていた……。