無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
 私もお仕事がんばるね……

 私と仕事とどっちが大切なの? なんて、言ったりしないから。

 宙のメールに向かってもう一度ニッコリと笑顔を作り、

悲しい気持ちを断ち切るようにして、宙によく似た男が映っているパソコンの画面も閉じた。





―― それから一週間が経った……。



 宙からは何の連絡もない。


 もともと宙はそういう人だったのだから仕方ないじゃない……。


 寂しくなる度に自分にそう言い聞かせたが、

おやすみとか、おはようのメールくらいはくれてもいいんじゃない? と思ってしまう。



 そして、今更ながら思うのだ。


 どうして、リアルの宙について聞いておかなかったのだろう?

 住所は教えてくれたけれど一人暮らしなのか?

 職場はどこなのか? 歳は何歳?

 鈴木と教えてくれたけど、名前は本当に宙なのか?



 私ってあなたの 何?



 あんなに話をしたのに、肝心なことは何も話していない。


 考えれば考えるほど、宙については知らないことばかりだった。
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