無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
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崎田のことは気になったが何が出来るわけでもない。それ以降のことは何もわからないまま三日が過ぎて……。
―― ん?
西園寺常務と車に向かって歩いていくと、どこかで見覚えのある警備員に気がついた。
そういえばSPが一人交代するという通知が来ていた事を鈴木は思い出した。
警備については全面的に信頼している氷室仁に任せている。
なので詳しく通知を見ていなかったが……
もしかして? とザワザワと胸騒ぎを覚える鈴木に、その警備員がビシッと切れのいい挨拶をした。
「今日からお世話になります 崎田です」
「よろしくお願いします」
西園寺専務は軽く挨拶をして先にリムジンに乗った。
後に残った鈴木は、名刺を取り出して、崎田に渡した。
「常務の秘書をしております鈴木です」
初対面での名刺の交換はビジネスマンの常である。
と、ここまでは通常通りだが、崎田と聞いてはそこで黙っていられなかった。
「青木邸にいらっしゃったそうですね」
「はい」
「ユキさんはお元気でしたか?」
心の中では最初に“俺の”と付けたことは言うまでもない。