無垢なメイドはクールな彼に溺愛される


  ***



 崎田のことは気になったが何が出来るわけでもない。それ以降のことは何もわからないまま三日が過ぎて……。


―― ん?


 西園寺常務と車に向かって歩いていくと、どこかで見覚えのある警備員に気がついた。


 そういえばSPが一人交代するという通知が来ていた事を鈴木は思い出した。

 警備については全面的に信頼している氷室仁に任せている。

 なので詳しく通知を見ていなかったが……

 もしかして? とザワザワと胸騒ぎを覚える鈴木に、その警備員がビシッと切れのいい挨拶をした。


「今日からお世話になります 崎田です」

「よろしくお願いします」

 西園寺専務は軽く挨拶をして先にリムジンに乗った。


 後に残った鈴木は、名刺を取り出して、崎田に渡した。

「常務の秘書をしております鈴木です」

 初対面での名刺の交換はビジネスマンの常である。

 と、ここまでは通常通りだが、崎田と聞いてはそこで黙っていられなかった。

「青木邸にいらっしゃったそうですね」

「はい」


「ユキさんはお元気でしたか?」

 心の中では最初に“俺の”と付けたことは言うまでもない。
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