無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
 宙のことで頭が一杯のユキは、以前崎田が
『一つだけ残念なことがあります 派遣先での恋愛は禁止されていることです』
 と、言っていたことを忘れていたので、

 崎田が辞めた時も、ほんの少し寂しいと思っただけだったし、辞めた後に崎田が会おうとする理由に気づく余裕がなかった。

 ただ、真面目な崎田が言うからには何が大事な用事があるのだろうと思うに留まっていた。


 時間は三時頃なら……。

 来客の予定はないし夫人だけなのでユキの母がいれば事足りるはずだと思い、

「三時でよろしいですか?」 

「ありがとうございます」


 近くある古くからある喫茶店で待ち合わせた。



 電話を切り崎田のことはそれきり忘れたようにユキはまた画面を見つめた。


――宙さん……


 視線の先には更新のないブログがあるだけである……。
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