無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
花言葉 ―君を愛す ―

 鈴木がタクシーに乗りこんだ頃、

 株式会社KIRITANIの専務室でバシバシと真優が机を叩いていた。

「聞いてっ! すぐにっ!」

「わかった わかった」


 会議から戻るなり、真優に「大至急2月25日の鈴木翼さんの予定を聞いて!」と、ものすごい勢いで詰め寄られた遥人は

「はいはい 聞くけど理由を説明して」

と、落ち着いた声で答えた。


「ユキが…… ユキが生徒会長に弄ばれているのかもしれないの」

「え?……弄ばれる?

 ちょっと待ってどういうこと」


「細かい事は言えないの

 でもね、その日の夜、生徒会長がどうしてパントムにいたのか

 その理由がわかればそれだけでいいの」



 可愛い恋人が「ユキが……ユキが……」 と半泣きになっている姿には弱い。


 それ以上詳しい事は聞かず、真優にソファに座るように促して、

 遥人は西園寺洸に電話をかけた。



「洸さ、2月25日夜

 生徒会長がどうしてパントムにいたのか知ってる?」


 ソファーに座るどころか、遥人の隣に来て自分の耳をくっつけようとする真優を、指先でくすぐったりしながら追い払った遥人は、

 真優を警戒しつつスマートフォンを左手に持ち替えて話を続けた。
< 302 / 316 >

この作品をシェア

pagetop