無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
 三十分ほど走ったところで、車は会場となるホテルに到着した。


 ユキはパーティ会場の廊下まで来たことはあったが、
会場の中に入ることは初めてである。

 緊張し過ぎて眩暈がする思いだったが、
真優を守るのが自分の使命だと思えば、気持ちも落ち着いてきた。


 見渡せばユキが脳裏に焼き付けている著名人が沢山いる。

 だが、よくよく見ると、創立記念というパーティだけあって社員だろうと思われる緊張した様子の女性たちもいた。

 不慣れなのは自分だけではないようだと、ユキはホッと胸を撫で下ろした。



 特にすることもないし、誰かに話しかけられても困からという真優に促されて、二人はオードブルが並ぶテーブルの前に来た。


「あ、お嬢さま これって意外と冷めても美味しいんですね」

「どれどれ…
 あ、ほんとだー意外だね」

「うんうん、こうして実際頂くと参考になりますね」

「取りやすさも大切でしょ」

「ええ、ほんとうに」


 これは頂けないとか、これは美味しいとか二人の世界で楽しんでいると…



「ユキ?
 あ、青木のお嬢さま」


 掛けられた声に振り返って目に映った声の主は

 !

 … なんと


「やあ、久しぶりだね」


 ここにいるはずのない木村だった。

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