無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
「…お久しぶりです」

 他人行儀に挨拶をすると、

 木村は目を細め、
人の良さそうな笑顔を浮かべながらユキと真優に話かけてこよう更に一歩前に踏み出した。

 ユキが警戒の色を眉間に滲ませたと同時に、木村の隣にいる女性が木村の腕を引き、
激しい嫉妬ともとれる眼差しで真優とユキを睨んだ。


 言葉は出さないが、彼女の目は口ほどに物を言う。誰?この女、と。



「青木コーポレーションの令嬢だよ」

 言い訳がましく木村が言うのを冷たく見つめた真優は、
木村の連れの女性に軽くお辞儀をするとユキの手を引っ張った。


「行こうユキ
 あっちにママの友達がいるの 挨拶しなきゃ」

 グイグイ進んだ先で、

「…あの娘、菅沼建設の常務の娘だよ」

 真優が苦々しげに言った。


 ユキの手を強く握った真優は、ユキを振り返り

「バカだねあの男、あの子に取り入っても
 菅沼建設の常務はもうすぐ左遷されるのに」

 そう言ってニッコリ笑う。


「あの娘もすごく意地悪な子だって評判だから

 同情なんかしないんだ」
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