無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
 それから、パーティが終わる三十分前に桐谷遥人が駆けつけてきて、ユキの役目は完了した。


「ユキ、本当にいいの?」

「ええ、せっかくですから、少しお茶でも飲んでから帰ります」


「真優はうちの車に乗るから、ユキは崎田の車使って」

 真優の優しい婚約者に、そう言われたがユキは


「大丈夫です!

 まだ時間も八時半ですし、少しゆっくりしてからタクシーで帰ります

 崎田さんを待たせるのも気が引けますから」と断った。




 なんとなく、このまま一人で飲みたい気分だった。



 いつになく重く沈んだ心……


 この沈んだ気持ちの原因はなに?



 バーのカウンターでそんなことを考えながら最初に頭に浮かんだのは、真優を大切そうにエスコートして、リムジンに消えた婚約者桐谷遥人だ。



 幸せそうな二人を見たから?
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