無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
――  ハァ……


 フロントの女性によくよく礼をいい、
パントムを出たユキは、ホッとしたような困ったような、なんとも複雑な思いに囚われた。


―― 友人S……


 スラリと背が高く、見惚れるような素敵な目をした二十代の男性。

 あきらかにモテそうな、恐らくはイケメン……


 友人Sは、コンビニにトマトジュースとドリンク剤を買いに行き、
宿泊費まで払ってくれたという……。


 ショックのお陰で、とうに酔いが醒めているユキは、
クラッチバッグからハンカチを取り出した。 



 白地に群青色の糸で刺繍されたSという一文字……。

 ベッドサイドに落ちていた男物のハンカチは、おそらく友人Sのものだ。



 キレイにプレスされているそのハンカチの匂いを嗅ぐと、微かにいい香りがした。


――この香りはブランドDのライトブルー?

 その香りを頼りに目を閉じたユキは、タクシーの中で考えた。




 最初から思い出そう……
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