無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
 ただ、友人Sのメモを見た瞬間、ふいに思い浮かんだことを再び思い出し、
ユキはゴクリと息を飲んだ。


――泣かないで……

 とても優しい声と、優しくて甘いキスの記憶…



 キスをした場所がホテルの部屋でないとすれば、バー?

 フロントに行ってからは女性たちがいたのだから、そんなことは出来ないはずだ。



 下りる途中のエレベーターの中? 



   それともあれは夢……?




「ハァァ……」


 ユキの口から思わず洩れた大きな溜め息に反応し、
タクシーの運転手がバックミラーを見た時には、ユキは唇を噛んで自分の頭をコンコンと叩いていた。



――最悪!



 バカバカバカッ!
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