無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
――翌朝

ピピピピピ

 目覚まし時計が鳴らすけたたましい音が、ズキズキする頭に容赦なく響く。



 伸ばせるだけ手を伸ばしてベルを止めたユキは、
重たい頭を労わるように額に手を当てた。



――ハァ……



 目覚めた場所が見慣れた部屋であることにホッとする自分が情けないが、
それでも今は、自分のベッドで朝を迎えられたことに感謝の気持ちしかない。



 大学を卒業して正式に青木家の使用人になった時、
ユキは自分だけの部屋をあてがわれて母と共同で使っていた部屋を出た。


 寝起きする部屋が変わっただけで他は何も変わらなかったが、
お蔭でこんな風に二日酔いで迎える最悪の顔を母に見られないで済むことにもまた感謝した。



 冬の夜明けは遅い。

 それでも起きる時間は同じないので、
ベッドサイドの電気をつけたユキはゆっくりと起き上がった。

< 56 / 316 >

この作品をシェア

pagetop