無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
――ハァ

 二度目の大きなため息をつき、
ユキは枕元にあるクラッチバッグに手を伸ばした。


 トマトジュースはタクシーの中で飲んだはずだが、
もし、バッグの中に二日酔いに効くというドリンク剤が入っていなければ、
昨夜のことは、夢だったのかもしれない。


そう都合のいいことを考えてみたが、
昨夜起きたことが現実である事を認識させるようにドリンク剤はバッグの中にあって、

それを見た途端頭痛に加えて吐き気と眩暈までおきそうになった。 




 念のため開けた形跡がないかボトルのキャップを入念にチェックしたりして、
安心する自分にまた呆れながら、小瓶の薬をひと口飲み


 一息つくとまた、


――友人Sさんはどこの誰?


 という疑問が湧き起こる。



 考えたところで答えは出ないのだ。

 ユキはそう自分に言い聞かせながら残りを一気に飲んで、
雑念を振り切るようにしてベッドから下りた。
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