無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
それから数時間後、ひと通り朝の掃除が終わった頃……
「ユキ!」
自分の部屋から飛び出るようにして真優が走ってきた。
「昨夜は何時に帰って来たの? 遅かったんだって?」
「えっ……ええ、すいません つい」
「大丈夫? 何かあった?
ごめんねユキ、一緒に帰ればよかった……」
ユキの腕を掴み顔を覗き込むようにして、真優は自分がいけなかったと繰り返して悲しげに見つめる。
「いえいえ大丈夫です!
本当に何もないですから!
私のほうこそ、電話一本もいれず、羽を伸ばし過ぎてしまってすいません」
青木家のメイドとして自覚が足りない!そんな気持ちでいるなら辞めなさい! 開口一番メイドの大先輩である母にこってりと油を搾られた。
そしてついさっきも青木夫人が心配そうに声を掛けられたばかりである。
『ユキ、今後遅くなる時は崎田の車を使いなさいね』
その上真優には謝られて、ユキは申し訳なさすぎて身も細る思いだったが、真優の追及は容赦なかった。
大丈夫なら一体どうして一時なんて遅い時間になったの?
ユキは絶対十二時過ぎになったりしないのに、誰と一緒だったの? 一人だったの? と、矢継ぎ早に聞いてくる。