無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
 ***


 高いビルの上層階には陽射しを遮るものはない。


 広い窓は、燦々と降り注ぐ太陽の光を通し、
夜の間に冷えた空気を温めている。




 少し眩しそうに目を細めた鈴木は、縦に連なるブラインドの角度を少しだけずらした。



「常務、つかぬことを伺いますが

 リムジンに私のハンカチが落ちていませんでしたか?」



 鈴木翼がそう聞くと

「ん? 珍しいねぇ君が無くし物をするなんて
 今日は台風でも来るかなぁ」


 深く椅子に座ったまま、掲げるように書類を見つつ西園寺洸はのんびりとそう答えた。


 そしてハンカチが落ちていたのか落ちていないのかは答えずに

「夕べ、

 パーティの後、君はどこに行ったの?」と聞く。
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