無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

「バーで少し飲んでから帰りました」

「ふーん

 で?何か楽しいことはあった?」



 ハンカチのことなど聞かなければ良かったと鈴木は後悔したが、もう遅い。


「バーで、偶然友人に会いましてね
 その時に落としたのでしょう、お気になさらずに」


 人並み外れた鋭い勘で何かを感じ取った翼の上司、西園寺洸は、
チラリと見上げた目をいたずらっぽく光らせた。


「お友達、ね」


「……」


「昨夜、電話をした時もバーにいたの?」

 相変わらず興味津々の西園寺洸の質問が続いたが、そのお陰で鈴木翼はふと思い出した。

 昨夜、彼女を起こしてはいけないと思い、
暗がりの中で胸ポケットから電話を取り出したことを……。
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