無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

　二人が進む廊下では、すれ違う誰もが軽く頭をさげる。

　西園寺洸は、ここ西園寺ホールディングスの最年少の役員である。

　たとえ創業者一族の御曹司であっても、もし彼が凡庸な男であれば二十五歳という若さで常務取締役につくことはなかっただろう。

　しかし彼は様々な面で非凡であり優秀だった。



　内面から滲み出る神秘な力とでもいうのだろうか、そこにいるだけで人々を魅了し胸を躍らせることが出来る人物が時々いる。

　男女に限らず、その人に評価されることを願い、その人の近くで働きたいと思わせる人が。


　西園寺洸もまた、そういった特別なカリスマ性を備えた人物だった。



　西園寺洸をはじめて知った時、鈴木翼は思った。



　天は人の上に人をつくる時がある。




　チン


　軽い音を立てて止まったエレベーターに、秘書鈴木が先に乗りエレベーターが閉まらないようボタンを押した。
　続けて西園寺常務が乗る。

　下がっていく箱の中は二人だけだ。