無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
鈴木には馴染みの店というものはない。
もともとそういう習慣がないが、折に触れ色々な店に行く。
小耳に挟んだ情報を頼りに新しい店を開拓することも、西園寺洸の秘書としては必要なことだ。
自分の目で見てこそ、今のように答えることができる。
ただし『Bijou』については、プライベートでまた行ってみようと思っていただけに、西園寺洸にはもう少し秘密にしておきたかった。
チン
エレベーターが止まって扉が開く度に、到着を待っていた社員が西園寺常務に気づき、ハッとしたように目を見開く。
そして会釈をしながら申し訳なさそうに入ってくる。
箱の中に人が増えたおかげで鈴木は常務を気にすることなく、
考え事に集中できた。