無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
―― 昨夜、彼女は既に店にいた
どこかのパーティの帰りだったのか、
間に一つ席を置いて端の席に座っていた彼女は、上品なドレスを着て小さなクラッチバッグを膝の上に置いていた。
若い女性が一人でカウンターにいるからと言ってそれは不思議なことではない、
恋人と待ち合わせかもしれないくらいは思ったのかもしれないが、甘くなくてすっきりした軽いものをとバーテンダーに頼んだ時には、彼女の存在も忘れていた。
しばらくそのまま、夜景に目を向けながらカクテルを飲んでいた。
何を考えていたわけでもない。
苦手なパーティの喧騒から解放され、流れるジャズを聞きながら静かに美しい夜景を見つめているだけで、気持ちが和らいでくるのを実感する。
そんな夜のひとときを楽しんでいた。
三十分ほどした時だろうか、常務からの電話に気づき、一旦席を外して店の外にでた。
そして席に戻った時――
こちらの動きに反応したように、少し動いた彼女の膝の上からクラッチバッグが落ちた。