無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

 バッグを拾って渡す時

『あり…がとう…ございます』、と言って手を伸ばした彼女はグラリと体を揺らした。


 咄嗟に身体を支えながら

『大丈夫ですか?』

 と声をかけ、その時はじめて、
 彼女がかなり酔っていることに気づいたのである。



――この状態で帰れるのか?


 他人事ながら心配になり、
 席を隣に移動して、水を勧めてみたりしながら少し様子を見ることにした。



『大丈夫です』


 背筋を伸ばしてそう答える姿は一見しっかりとしてそうに見えるが、五分もすると首が下がり、ふわふわと瞼が落ちていく。


 それでも気持ちは張っていたのだろう、無意識の中にいても背筋を伸ばし、決してだらしなく崩れ落ちたりしないという姿勢が見てとれた。
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