無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
―― 細くて長い睫毛が彼女の頬にキャンドルの影を揺らし……
肘をついて顔を支える細くて白い左腕。
テーブルの上に置かれた指先の、暗いピンクに塗られているそう長くはない爪。
ゆったりとアップにした髪の後れ毛から覗く華奢なうなじ。
そして、瑞々しく艶めく唇……。
時々思い出したように彼女に声を掛け、曖昧な返事を聞きながらどうしたものかと考えて三十分ほど悩んだろうか、
意を決して『スマートフォンを見てもよろしいですか』そんな風に形だけ聞き、彼女の手のひらの下にあるスマートフォンを手にとった。
なぜそんなことをしたのかと言えば、
スマートフォンの記録から自宅か親しい友人の連絡先がわかるだろうと思ったからであり、バーテンダーの女性に頼んで迎えの電話を掛けてもらえばいい、
そうすれば仮に彼女がどこかの令嬢であっても問題にはならないだろうと考えたからである。