無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
ホテルパントムのバーで酔って夜遅く帰った日から、一週間が経っていた。
友人Sとは誰なのか、
ハンカチ以外に相変わらず何の手掛かりもない。
たった一度バーで一緒になっただけでである。
そのまま友人Sとの縁は切れてしまったのだろうと、ユキはほとんどあきらめていた。
それではなんだか寂しいような気はするが、何もわからないのだから仕方がなかった……。
何しろ友人Sは、清廉潔白な紳士なうえに、よく知りもしない酔っ払い女の為に三万円近い宿泊費まで払ってくれる太っ腹なイケメンらしいのである。
一期一会の縁ではあっても、せめてそのイケメンぶりをこの目が覚えてさえいれば甘い想い出として胸の奥で大切に温めるのに……
なんて残念なことだろう。