無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

 青木家の主人は昨日の朝、ニューヨークへ行ってしまった。


 ニューヨークには留学中の真優の弟、健(たける)もいるので、青木夫人にしてみれば夫の長いニューヨーク出張は妻としては寂しかったが、
 健の母としては喜ぶべきことだった。


 夕食の後、

 ふたりぼっちになってしまった青木夫人と真優がくつろぐリビングに、ユキが紅茶を持っていくと、バレンタインの話になった。



「ユキは? 本命のチョコレートを渡す相手とか誰かいるの?」


 青木夫人がそう聞くと

「そうだよユキ! 今年こそ本命チョコを渡す相手、今からでも見つけなきゃ!」


 ユキにそういう相手がいないことを知っている真優は、そう言ってソファーに座るよう促してくる。



 失礼しますとソファーに浅く腰を下ろしたユキは


「でも、私は独身主義者ですから」

 と、ニッコリと微笑んだ。
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