籠姫奇譚
それから数日。
長く続いた雨もようやく止み、空が高い。
蝶子はいつものように、仕事場に篭る遙を待っていた。
もう三日ほど顔を合わせていない。
家の中で味方と言える人は遙だけなので、彼が傍にいない時間は、蝶子にとっては辛いものだった。
「紅茶……」
これを口にしている時だけは、遙と繋がっていられる気がする。
蝶子がその淡い色を眺めていると、背後で戸を引く音がした。
客なら使用人が対応するので、蝶子は顔を見せない方が良いだろうと黙っていた。