籠姫奇譚
「わたくしがね、随分昔にあげた物なの。まだ持っていてくれたなんて……」
悲しみが込み上げてきたのか、珠喜は口許を押さえた。
珠喜の嘆く姿に、瑪瑙は心を痛め、目をそらした。
「やっと鳥籠から出られたのに、もう翼を無くしてしまったのね……」
「珠喜さん、あげはちゃんは、無くしたんじゃありません」
瑪瑙は空を見上げる。
「きっと大切な人を支えるために、自分が翼になったんです」
夕焼けに沈む空の下、二人はその場を離れようとはしなかった。