籠姫奇譚
二人の大切な友人が、望んだことなら。
「僕は作家として、君たちの友人として書こうと思う。二人の物語を……」
あれからもう一年。
月日は皮肉に過ぎて行く。
「先生、次のは後どれくらいで書き終わりますか?」
いつもの五月蝿い編集者の言葉。
「さぁて……ねぇ」
構わず原稿を書き進める。
「『揚羽蝶』──遊女と絵師の恋物語、か。あ、そういえばこの辺でも、昔そんな話がありましたっけねぇ」
「あぁ、あったね」
「もしかしてあれがモデルで?……とにかく先生の作品はどれも好評でっせ」
「そうなのかい?それなら二人も喜ぶよ」
僕はこの物語を書き残さなければいけない。書き続けなければ。
それが、僕が彼らにしてやれる唯一の事だから。
相原 瑪瑙