瑠璃色の姫君
「本当にちっとも似てないよ」
「そうかぁ?」
「あの人よりもっと美人だよ!」
「妙にレティシアを過大評価するな?」
「んなことないよ、王女様は麗しの美女なんだから当たり前じゃん!」
勢いよく腰を上げて、僕の方へ体をずいと持ってきたフリュイの瞳は真剣だ。
オリーヴェン国民は、レティシアのことを女神のように崇め奉っているらしい。
麗しの美女。すごい二つ名だ。
「僕だってレティシアが一番美人だと思うよ」
心からそう思うよ。
だって、僕の片想いの相手だし、僕はレティシアよりも綺麗な人間は見たことがないと思っているのだから。
目の前の少年も同じくらい綺麗に見えるけれど、男だから省くとして。
「その割にはあの人のこと見て王女みたいーとか言うんだ?」
「うーん、雰囲気かな、似てないか?」
「似てない!」
うわ、そんなに熱く大声で否定することないだろう。
何をムキになっているんだよ。
「髪の毛、瑠璃色じゃないもん!」
「そうだな、赤毛だな」
馬を操作するそのポニーテールは凛々しく見える淡いオレンジよりの赤髪だ。
当たり前だけれど、レティシアの瑠璃色とは似ても似つかない。
「ほら、瞼に黒子がないもん!」
「よくそんなところ見てたな?」
レティシアには左目の瞼に黒子がある。
目を開ければ、くしゃりと三重に挟まれるのだ。
一国民が、よく知っているのだな。