瑠璃色の姫君
「……ふぅん。なんだ、オリーヴェン広報誌は嘘っぱち書くんだなぁ」
唇を尖らせて、フリュイは窓の外に目を向けた。
機嫌を損ねてしまったかな、と頭を掻いた僕。
レティシアのことを知ったかぶるのは、いくらフリュイでもちょっと気分が良くなかった。
だから、ついつい強い口調になっていたのかもしれない。
「フリュイ、気を悪くした?」
「ううん。むしろ感心してる」
「感心?」
「ちゃんとわかってんだな、ってさ」
流れる風景を目で追うフリュイは、そうぼやいた。
ちゃんとわかってんだな、か。
僕は本当にレティシアのことをちゃんとわかっているのだろうか。
正直、10年前以来会っていなくて手紙だけのやり取りをしていた僕らの関係上、実は避けられているのではなかろうかと心のどこかで思っていた。
今こうして彼女のことを追うことも、彼女の迷惑になっているかもしれないのではないか、と。
表向きは彼女のことをわかっていたとしても、内面までは会ってもいないのだからわからないのだ。
わかるわけがない。
かくれんぼをしよう、と手紙をくれたのだって、あれがレティシア本人の字で本人の想いかはわからないだろう。
誰かが代理で書いているかもしれないし、僕は踊らされているだけかもしれない。
もっとも、あの手紙の字は今まで送られてきていた字と同じだと思うけれど。
そうなれば、今までも代理人の字だという可能性が出てくる………。