瑠璃色の姫君
「…フリュイは………」
フリュイの目を離さずに見つめれば、フリュイが口を開いた。
僕は聞き耳を立ててその声に耳を澄ませる。
「フリュ……うわっ!?」
フリュイが突然動揺した声を上げた。
馬車が大きく揺れたのだ。
「何?」
「しっ!」
僕は自分の口に人差し指を当ててフリュイに話さないように指図した。
フリュイは、口を結び眉毛を下げる。
窓の性質上、外から僕らの姿は見えないはずだが。
「おい姉ちゃん、その中にいるのは落ちぶれた貴族だろう?」
「いいえ。……高貴なお方です。そのような方に手をかけるおつもりですか」
カーラの声は厳しいもので、状況もまた厳しいだろうと思わされる。
「そういうつもりだけど、悪いか?」
「ええ。あなた方の人生は必ず悪い方へ傾きましょう」
外から聞こえるのは、男の声とカーラの強い声。
外から見えないとしても、フリュイをしゃがませて、僕は外を見た。
そこにいたのは、大きな体格をした見るからに柄の悪い男が3人。
いかにも強そうに見える。
これはまずい。
カーラが鞘から剣を抜いた音が聞こえて、額に汗が滲んだ。
「フリュイ、絶対ここから出てくるなよ」
僕が剣を手に取ったことやその言葉で、なんとなく状況を察したのだろう、フリュイは鞄から短剣を取り出した。