瑠璃色の姫君
「バベル、行くの?」
「ああ。カーラだけに戦わせられない」
カーラが騎士団にいたのは、少し前の話のはずだ。
それならば、動きが鈍っていたりするかもしれない。
それに彼女は女だ。
女ではあの柄の悪い大男を相手にするのは厳しいだろう。
力では敵いそうにない。
そうなれば、僕が行くべきだ。
「でも、剣を振るうのは自信がないんじゃなかった?」
フリュイが心配そうにそう聞いてきたけれど。
「……大丈夫だ」
そう、大丈夫だ、自分を信じるんだ。
自信はあまりないけれど、剣の大会で優勝経験があるんだ。
ガレットだって、剣の強さについては心配してないと言ってくれたのだから。
「フリュイも行く」
「は? ダメに決まってるだろ!」
「行くったら行く!」
「ダメだ! お前に何かあったら俺が駄目になる!」
「それはこっちの台詞だから!!」
「…………え?」
思ってもみない言葉に、一瞬言葉を無くした。
「バベルに何かあったらフリュイたぶん発狂するよ」
「発狂……」
「だから、一緒に戦う」
連れてって、と言った時と同じ揺るぎない桜色の瞳が僕を一心に見つめてくる。
どうも僕はその桜色に弱いらしい。
「……わかった。無理はするな」
「ん。バベルも」
「ああ」
フリュイから拳を突き出され、自分のそれをトンと合わせた。