瑠璃色の姫君




「行くぞ」


「うん」



僕は帽子に髪の毛を隠して右から、フリュイは眼鏡の真ん中をくいっと押し左から、馬車の扉をバンと開けた。


途端に伝わる、緊迫した空気。



太陽の出る昼間である今でも、あまり人目につきそうにない暗い路地の中、妙に剣の光が目立つ。



「なんで出てきているんですか!」



カーラの余裕のない厳しい声。



「よそ見している余裕があるのか、すげーな姉ちゃん」


「……くっ」



キン、と高く鳴る剣が交わる音。



あぁ、戦さ場だ。


どうしようもなく勝手に血が騒ぎ始める。



カーラと戦っていた男の1人が僕の方へナイフの先を突きつけて走ってきた。


馬車から飛び降りて、僕はその男を向かい打つ。



……右だ、右にナイフが来る。



男の動きからそう判断する。


鞘のついたままの剣を真っ直ぐ構える。



チッ。



鞘を抜く暇がない。


相手の速さはなかなかだ。


男が突っ込んでくるのをよく見ながら直前でそれを右に動かす。



ナイフが鞘に食い込んでいる。



それを見て、口の端が持ち上がるのがわかった。


思った通り力が強い。


大きな体をしているだけある。



「何笑ってんだよ、兄ちゃんよぉ」


「君との勝負、楽しめそうだと思ってね」


「そうかい。お手並み拝見と行こうか」



さっとナイフを下げられ、数歩下がる男。


僕は横跳びをして、馬車から離れる。


男もそれに合わせて横に跳ぶ。




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