瑠璃色の姫君




一瞬目の端に映ったフリュイ。


短剣を手に細身の男と互角に戦うのが見えた。


ガキだからと思って心配したけれど。


初めに言っていた通り、本当に剣は扱えるんだな。



鋭く吹きすさぶ風が頬をなぶった。


狭い路地だからか異様に風が強い。


大気が高揚しているように思える。



男が地を蹴る音がして僕は重心を低くした。


その巨体でどう飛んだのだと問いたくなるほど飛び上がった男。


ナイフの矛先が小さく煌めいた。



「バベ……ぐっ、ううっ!」



えっ。


聞こえてきたフリュイの悲痛の声に、僕は面白いくらい動揺した。


思わずフリュイの方へ顔が向く。


それを見た男がにやりと笑う。



「フリュイ、っつ…」



男が勢いをつけて僕を斬りかかる。


寸前で止めたが、刃が頬に当たる。


頬から生温かいものが垂れた。



くく、と男の気味の悪い笑い声が耳をつく。



「言うほどでもないな、兄ちゃん」



フリュイのことを気にしている場合ではなかった。


頬を手の甲で触れる。


赤い血液が甲にへばりついた。



「チッ」



王子たるもの、舌打ちなんてするものではないが。


無意識のうちに出ていた。


鞘を抜く。


早くここを終わらせて、フリュイの元へ行けばいいんだ。


ぐっと気持ちを改める。




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