瑠璃色の姫君




その舌打ちや僕の様子を気にする素振りも見せず、男はまた突っ込んでくる。


僕の剣に男の持つナイフが勢いよくキンと甲高い音を立て合わさる。


合わさった刃がギリギリと音を立てる。


男が体ごと刃を押してくる。


その所為で踏ん張る僕の足が少し後ろに下がった。


最悪だ、圧され気味だ。



「挑発してきた割には隙だらけだな」


「……決めつけるのは早くないか」


「口だけは達者なんだな、兄ちゃんよ」



煽ってくる男に、苛立ちが募る。


だめだ。


これに釣られてイライラしているようじゃ、感情のままに動いて失敗しそう。


相手の思うツボだ。


ダメだダメだ、ダメだ。


こうなるから剣に自信が持てないんだ。


強がってみても、いざとなった時に強くいられない。


心が弱いからだ。


弱い僕じゃ、男には勝てない。


勝てない、勝てない……。



「バベル」



カラン。


その時聞こえてきた鈴の音。


瞬間、胸がスッとした。



「……レティシア?」



僕の頭に、彼女の言葉が注がれ出す。



『剣を振るうバベルはかっこいいよ』


『強い想いがあれば自信なんて、要らないわ』


『気負わなくても、目の前のことをやればいいの』



それは幼い頃に手合わせした時のこと。


騎士であるカーラに教え込まれたレティシアの戦い方はいつも鮮やかだった。


動きが、流れるようで綺麗だった。



ああ、そうだった。


あの頃の僕は精神が強いレティシアから精神強化をされていた。



『バベルらしく動けばいいの』



そうだよね、レティ。




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