瑠璃色の姫君
「なんだよ、つまんねーな」
男の声が聞こえてきて、我に返る。
刃は未だ合わさったまま。
どうやらまだ力比べをしていたらしい。
僕らしく動けば、それでいい。
うん。
力が湧いてくる。
レティシア、見ていて。
「うおぉぉぉお!」
「!?」
大声を上げて。
力一杯、剣を、体を、前に押した。
どこにそんな力があったのか。
そんなのわからないけれど。
「ぐわっ」
男の倒れる音がして。
ああ、投げ飛ばしたのか。
そう気付いて。
少し頬が緩んだ。
地に落ちた男が呻き声を上げる。
「油断大敵って言葉、知ってます?」
僕はそう口にして剣を男に突きつけた。
男の喉元に矛先を向ける。
すると男は怯えた目で僕を見上げた。
「すまなかった。助けてくれ」
「情けないな、命乞いか」
震える男の声。
殺さずとも気を失わせて縄で縛りあげればいいか。
そう考えた矢先だった。
怯えていた男の目が、細められた。