瑠璃色の姫君
見捨てられたというわけか。
可哀想に。
同情の眼差しでその男を眺めているとあることに気付いた。
もしかしなくてもフリュイが攫われた場所が分かるのではないかということだ。
「おいお前、アジトはどこだ」
隣に転がっていた自分の剣を男に突きつけて僕はそう問うた。
「………」
男は刃に怯えることなく、キッと僕を睨みつけて歯ぎしりをした。
少しの間、沈黙が訪れた。
その時間が長く感じられて、刃をもう少し近づけた。
それでも男は口を開こうともしないので、仕方なく僕から話しかけた。
「言わぬつもりか」
「ああ、言うつもりはない」
「ならば、殺すまで」
哀れな男だ。
見捨てられた仲間の為に命を売るなんて。
「バベル様、落ち着いてください…!」
カーラの焦ったような声が聞こえる。
男は覚悟を決めたように目を閉じて、斬られるのを待っていた。
その状況に、なんだか笑えてきた。
ここで笑うなんて僕って嫌な奴だな、と思いながら堪えきれずに笑い始めた。
「あっははははっ」
そんな僕を驚きの含まれた揺れた瞳が見つめてきて、また笑えた。