瑠璃色の姫君
「少し黙っておいてくださいね」
その言い方は酷くはないか。
そう思いつつも、自分が悪いことに気付いているので口を閉じた。
少し悔しいから、唇を歪めながら。
改めて見てみると、かつてここにレティシアと来た時のような素敵な雰囲気のあるプラネタリウムは、その面影を無くしていた。
今、目の前にあるそこはなんというか、陰気というような良くない気が漂っているように感じる。
「ここは改革が必要だな……」
ぼそりとそう呟けば、アドルフは頷いて「また観光地としたいのですがね」と寂しげに笑った。
そう、僕がここにレティシアと来た時はオリーヴェンの観光地としてこのプラネタリウムは人気だったのだ。
「あの頃に戻したい。思い出のあの頃に」
今じゃ星が見えそうにないプラネタリウムだがそのうち、ここの復興支援をしよう。
僕と彼女が、わくわくして楽しくてたまらなかった星を見ることを子供も大人も自由に見れる。
そんな場所を、作り直そう。
「手伝います」
「当たり前だろ! なんならレティシアについてお前もシュトラントに来ればいいくらいだ!」
平然と言うアドルフにそうつっこめば、くすくすと笑われた。
「その時はお供しましょう。ですが、王女様はバベル王子とご結婚なさるかはまだわかりませんがね」
むむむ……あーもう!
聖騎士のくせに性格悪いってどういうことだよ!
許嫁ではあるけれど、レティシアとは10年間会ってないし今こうして探していても結婚まで漕ぎ着けるかはわからなくて、少しビクビクしているというのに。
そこを仕返しとでも言うように、突いて来ないて欲しいんだけれど。
「王子、何を一人で百面相しているんです? 入りますよ」
おい、そんなに引くなよ。
お前のせいだよ、アドルフめ。
カーラの小さな笑い声が聞こえたことは聞かなかったことにしよう。