瑠璃色の姫君
「それはどこのオークションだ!」
「す、すぐ近くの闇市です」
「縄解いてやるから案内しろ!」
「はっ、はいぃっ」
オークションって。
奴隷のオークションって。
あのあどけない少年をオークションに?
それはあんまりだよ、兄貴さんよ!
「お、王子、少し落ち着いてください」
「無理だ! 落ち着いていられるか!」
眉根を寄せながら、僕の気を落ち着かせようとアドルフが肩に触れてきたが、僕はそれを払った。
「王子……!」
「へ、おうじ?」
アドルフは払われた手をさすりながら、僕を呼んだ。
その呟きを無視して案内役になる男の背中で手を縛られているその縄を解いてやっていると、その男が反応した。
それから、体を出来る限り沿って僕を見上げてくる。
「ほわぁ……」
「なんだよ、やりづらいから前向け」
「あの、バベル王子、ですよね?」
「そうだけど?」
「うわぁ。実物やばい、麗しい…!」
「そうだろ。じゃなくて黙れ、前向け」
「ハイ…」
あー困った。
またファンが増えた。
麗しいだとよ、麗しい。
「あ、あのっ、バベル様。縄さっきよりも硬く縛られていくようですが…」
「えっ」
あ。
本当だ、つい手元が狂ったかな。
いい気になってたからだろうけれど。
「ごめん、カーラ。やって?」
「承知しました」
結局、カーラに縄を解くのは任せた僕だった。