瑠璃色の姫君




フリュイの手が離されて、荒い息を吐きながら逃げてきた道を振り返る。


その道に、騎士の姿はない。


額に汗を光らせたアドルフとカーラはいたけれど。



「あのやり方で撒けちゃうんだ…。凄いなフリュイ」


「へへっ、まあねっ」



しばらくぶりのフリュイは、可愛らしくウインクを決めて自慢気に胸を張った。


その笑顔の破壊力と言ったら。


自然と頬が緩み、思わず手で顔を覆った。



「遅くなってごめん。怖い思いはしなかったか?」


「ぜーんぜん。平気に決まってるじゃん!」



そういうフリュイだが彼の腕には縄の跡があり、縛られていたのだろうと考えられて心苦しくなった。



「ごめんなフリュイ」


「平気だってばー」


「うん…」


「それより、バベルこそ大丈夫なわけ? ほっぺたから血出てたでしょ?」



さらっと流れるような動作で頬を撫でられて僕は体を固くした。



「おー血かたまってるぅー」



ペチペチと顔を触られて、良かったと安堵の表情を見せられる。


ちょっとフリュイさん、近いかな。



「わ、バベルお肌すべすべだね」



そ、そろそろ触るのやめてくれないか?


すごく何というか、何ていうか!


恥ずかしいというか!


胸がざわつくっていうか!


いや、これだと恋してるみたいだから違うな。


えーと、えー、なんだこれ。


とりあえず、僕から離れてくれなきゃおかしくなりそう。



「フリュイ!」


「んー?」



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