瑠璃色の姫君




「すまん」



ぐいっとフリュイの顔を押してやれば、うむぅっ、とくぐもった声が聞こえてくる。


だってなんか、すごく…すごく…。


うーむ、難しいな。


言葉に出来ない。


頭をぐるぐる回転させて考えていれば、カーラがにっこり笑ってこう言った。



「バベル様とフリュイ様って、兄弟みたいですね!」



兄弟?


えぇー…それはちょっとなんか、えーと、嫌、というか……。


ん? あれ、嫌なのか?


自問して、自答もカーラへ反応も出来ずにいると、フリュイが怒り出した。



「カーラのあほ! 兄弟じゃないもんねーだ!」


「そうですよね、すみません!」



プリプリ怒るフリュイに、カーラは赤髪のポニーテールを垂らして頭を下げる。



「ていうか、その怖いお兄さん誰さ!」


「元聖騎士アドルフ様です」


「あっそう! ……え、あ、本当だー!」



お? 意外や意外。


フリュイがアドルフのことを知っていたとは。


あ、そうか。


フリュイはオリーヴェン国民なのだ。


元とは言え聖騎士なんだから、国民みんなが知っていてもおかしくないのだ。



「バベル王子の旅の相棒だとお聞きしております。お初にお目にかかります」


「たぶんお初じゃないよー」


「それは失礼しました。どこのお坊ちゃんなのかお聞きしてもよろしいですか?」


「んーそれはカーラから聞いてよ。フリュイはバベルと話したいことあるからさっ」



フリュイがちらりと僕の方を見てきたことで、理解した。


やっぱりフリュイは家柄のことでは僕に聞かれたくないらしい。




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