瑠璃色の姫君
おしゃれな細工のしてある門を開くとキイ、と音が鳴る。
店の屋根に、ガレットが飼っている真っ白な頭に艶のある黒い体をした鷹がいた。
「久しぶりだね、ルディ」
目が合えば鷹のルディは、黄色いくちばしをパクパクと動かして翼をバサバサと広げた。
歓迎してくれているのだろう。
ーカランカラン。
扉を開けると、いつもの素敵で軽やかなベルの音が店内に響いた。
「ガレット!」
友人の名前を呼びながら、店に駆け込むと、強そうな体をした男のオレンジ色の頭が顔を出した。
「おう、バベル。久しぶり」
久々に見たガレットは、僕に会えたのが嬉しいのか、おっかなく見える切れ長の目を細めて笑った。
「すまない、ガレット。ちょっと匿ってほしいんだけど」
「ああ、お前さんすごい話題になってるぞ」
「話題!?」
「バベル王子がまた脱走した、ってな」
“脱走した”としか思われていないのならまだいい、と僕はホッと一息ついた。
街探索のための脱走はいつものことだから、僕を探しにくる人数は少数だと思う。
それが“行方不明”となった時には、大勢の者が駆り出されることだろう。
「それで、匿ってほしい、って?」
「ああ」
「今回の脱走の目的は、街探索ではないのか?」
……鋭い。
じっとガレットから試すように見られて、はあ、とため息がこぼれた。
「しっかり話すから頼むよ、匿って」
「それなら匿ってやらなくもない」
「ありがとう」
納得したらしいガレットは、わざわざ店を閉じてくれた。
僕が連れているフリュイを不思議そうに見ながらも、僕らを店の奥に入れてくれた。