瑠璃色の姫君
「で、今こうしてバベルの手に渡ったわけであります」
「ほう。どーもありがとう」
「はーいよー」
色々リアルではあり得なさそうなことだな、と思いながらとりあえずは納得してみた。
「それよりバベルー」
「んー?」
「あの馬車すんごい豪華だね」
「どれどれ?」
「あれあれ」
指差された方に顔を向け、一瞬で血の気が引いた。
「ちょ、おい。隠れるぞ」
「え、なんで。あの馬車知ってるの?」
「黙って隠れて」
「やだよーだ。あの馬車すんごい気になるんだもん! 」
「あとで言うから言うこと聞け!」
「やだやだ、今聞くから話してバベルー!」
ジタバタと暴れるフリュイのせいで気付かれたのだろう、前方の馬車がぴたりと止まった。
「やばい…!」
ぐいっとフリュイの腕を引っ張って僕は馬車の少し離れた横を素早く通り過ぎて、シュトラント方面に向かって走り出した。
「ぐえっ、首締まるっ」
「走れフリュイ!」
突然引っ張られたせいで服が首に食い込んだのだろう。
だけど、そんなの今は気にしていられない。
せっかく馬車の後輪側に回ったのだ。
追ってくるまでに少しは時間が稼げるはず。