瑠璃色の姫君




カーラとは同じ赤髪だが似ても似つかぬそれは、真紅と言うべき色の縦巻きカールの髪。


胸元の開いた細身の黒いドレスは豊満な胸だけに存在感を主張していて、男としては魅力的だと感じる。


だが、主張しすぎなそれは僕からしたら正直好きじゃない。


とにかく、色っぽいお姉さんと言った様子の彼女ーロゼアはシュトラントで1番の大富豪の娘なのである。


加えて、彼女はレティシアとの婚約が成立しなかった時の次の嫁候補だ。



「バベルーっ!」


「うぐっ」



その人は突然僕の方へ駆け出して、拒否する暇も与えず僕の首に腕を回して抱きついた、というか、胸に顔を押し付けられたというか。



「バベルぅ、会いたかったわ!」


「うぅ、ロゼアさん痛いです…」



胸にぎゅうぎゅう押されて窒息しそうになる。


それに、フリュイの視線をすごく感じる。


もう色々痛くて辛い。



「は、離して、ロゼア」


「あら、ごめんなさいね」


「あ、空気吸えた……!」


「んーバベル可愛い。ぎゅってしたい」



やっと解放されたのに、またじりじりとにじり寄ってくるロゼアに、僕はフリュイを突き出した。



「ぎゅってするなら、こっちにして!」


「まあ、美少年だわっ」



ロゼアの感嘆の声にフリュイは慌ててロゼアの前から逃げ出し、僕の後ろに引っ付いた。



「バベルの馬鹿」



後ろで小言を言うフリュイ。


うん、ごめん。


今のは悪かったよ。



「フリュイは決めてる人としか、ぎゅーはしないって決めるんだから!」



うわ……何それ可愛い。


上目遣いで言ってくるのがまた可愛い。




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