瑠璃色の姫君
それに気付いたジルは、軽く頷いた。
「ロゼア様、お茶の準備を致しましょうか」
「お茶会するのね、いいわね!」
最近買ったあのティーカップがいいわ! なんて言いながらやっと僕らから離れてくれて、馬車に向かって歩き出したロゼア。
ご主人の扱いが上手いジルに感謝だ。
「フリュイー……」
さて。残った問題は、フリュイのご機嫌とりである。
「なんですか、女たらしのバベル様」
「そんな二つ名は持ってないなぁ…」
だって僕は、レティシア一筋と名高いのだから。
それでもそれを知らないフリュイは止まらない。
「顔が綺麗で王子様だと何でも許されるんでしょ!」
うう、多少なりとも心が痛む。
容赦しないフリュイにズケズケと物を言われる。
デレデレはしてないつもりだったけれど、女の人に囲まれて大人しくその中にいたのは事実だ。
それを喜んでいたつもりもないけれど、確かにレティシアがそんな風に男に囲まれていたらと考えると、余裕で死ねる。
ふいに、服の裾をちょいちょいと軽く引っ張られた。
「ねえ、女の人に囲まれて笑ってるバベルを見たら王女はどうなると思う……?」
文句の連発をしていたフリュイの口調が急に落ち着いた形になり、僕の眼をじっと見つめてきた。
「……怒る、と思う」