瑠璃色の姫君
「さて」
店の奥に入り、ガレットが用意してくれた椅子にちょこんと座り彼が生活している空間を見渡すフリュイを気にしながら、ガレットは口を開いた。
「今回は何が目的で脱走してきたんだ?」
「ちょっと、人探ししようと思って」
「人探し?」
「ガレットは、レティシアが行方不明だって噂知ってるか?」
そう問えば、目を丸くしていたガレットは理解したように首を縦に動かした。
「レティシア王女を探しに行くんだな?」
「ああ」
深く頷いた僕。
僕と仲のいいガレットは、僕の初恋かつ許嫁かつ今も好きな女がレティシアであることを存分に知っている。
だけど、呆れたような顔をしてガレットは言った。
「それでこれからお前まで行方不明になったら、両国は混乱しないか?」
……もちろん大混乱だろう。
今現在、僕が結婚する歳である18になる前までにレティシアが見つからなくては他の婚約者を探さねばならなくなるからシュトラントは慌てているのに、僕までいなくなられちゃ困るだろう。
いくら僕が第一王子でなくても、王子であることに変わりはないのだから、行方不明になられると、誘拐されたのかもしれない、と考えたりしてしまうだろうし。
それは、想像すればすぐにでも描き出せる光景だ。
……だけど。
「僕が、レティシアを見つけたいんだ」
他の誰かが見つけるのではなく、僕が。
これは、譲れない。