瑠璃色の姫君
その言葉に少し絶望を感じて、頭を柔軟にしようと考え直して、言葉を繋いだ。
「それだったら、パン屋に寄ってからレティシアに会いに行けばいいよ」
セイラにフリュイを借りてたことを感謝しなくては、と思ってたんだよ。
丁度いいじゃないか。
なのに。
「うーん……」
その微妙な反応は、いいと言うよりも嫌という方に寄っている反応だろう。
「……なんでそこまで嫌なんだ」
「ごめん、バベル。そうしたいの」
緩やかに微笑まれて、とうとう僕は何も言えなくなった。
「そ、うか。だったら仕方ない」
最後は早口でまくし立てて、僕は少し頑張ってフリュイと同じように微笑んだ。
上手く出来た気はしないけれど。
「じゃあ最後までよろしく、フリュイ」
「こちらこそよろしく、バベル」
シュトラントまでの道はあと少し。
すぐ近くがオリーヴェンとシュトラントの間にあるカフェ・レヴなのだから。
***
「フリュイくんてさぁ、いつから髪の毛茶色いの?」
「えっ」
カフェ・レヴまでの道のりを行く馬車の中、僕の目の前でオーナーが親しげにフリュイに質問した。
フリュイは、口の端をピクリと上げて桜色の目ん玉をうろつかせる。
「う、生まれた時からですけど」
「へぇー」
「な、何ですか?」
「いやぁ」
なぜかニヤニヤと笑うオーナーと、オーナーを睨むフリュイ。
不思議な状況に、僕だけでなくロゼアもジルも首を傾げた。