瑠璃色の姫君
「やだ。これフリュイの宝物だから」
拳を胸にかき抱いてそう言われちゃ、粘る言葉は出ないというもので。
「それなら、いいや」
そう言うしかないのだ。
オーナーはそんな僕を見て、いいのか、と言うように肩をすくめた。
いいんだよ。
もう旅は終わりに近いのに、ここでしつこくして嫌われたくなんてないから。
「皆様、そろそろカフェ・レヴにお着きになります」
ジルのアナウンスで、オーナーはニッと笑った。
「さーて、もうすぐ愛娘に会えるんだな!」
オーナーの愛娘リーシャは、うさぎのように二つ結びをした可愛らしい、カフェ・レヴでよくしてくれた僕とレティシアの親友だ。
「そろそろゼノとくっついていれば面白いけど、どうだろな!」
「さぁ…」
肩にポンと手を置かれて、僕は曖昧に頷いた。
くっついていればいいけれど、とりあえずは2人のことよりも自分とレティシアとのことの方が今は大事だ。
「みんなレヴでちょっと飲んでいけよ!」
上機嫌のオーナーは、サービスしてやるよ! なんて言っていてロゼアの顔が綻ぶ。
どうしようかな。
リーシャとゼノの2人とは、レティシアを見つけてから会うという話になっていた気がする。