瑠璃色の姫君




「バベル様、申し訳ありません」


「何が?」



謝ってきたジルを見上げれば、ジルの手が高く上げられて、バン! と背中に刺激が走る。



「いってぇ!」


「バベル様」


「なんだよ、痛えよ!」



あのさ、僕が誰なのかわかってる?


君、そこのところわかってる!?



「桜色!!」


「は?」



叩かれた背中を手が届く限りでさすりながら僕は眉を下げた。



なんなんだよ。


いきなり“桜色”ってはい? 意味不明。



ていうか僕、王子なんだってば。


あ、久しぶりに王子なのにって思った。


フリュイからよく王子じゃないみたいに接されていたもんなぁ。



のほほんとそんな風にフリュイとのやり取りを思い出していた僕にまた痛みという名の刺激が、次は頬に走る。



「ココア!!」


「うぐっ」



ペシン、といい音をさせてロゼアに叩かれた頬をしきりにさする。



痛い。次は何、ココア?


さっきから何、意味不明だよ。


満足そうに鼻から息を吐いたロゼア。


僕をいじめて満足するってやっと性格の悪さがにじみ出たね。


それからその後ろで、ジルが体を曲げて笑ってる。


あのクールなジルが爆笑している。


ちょっと、もう一度言ってもいいかな。


僕、王子なんだけど。




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