瑠璃色の姫君
「バベル」
オーナーが僕を手招きして、軽く僕の耳を引っ張る。
そして、耳元に小声で囁いてきた。
「さっきの3つのヒントは一部で、もっと沢山、旅の中で散らばっているはずだ」
「うん?」
「それをかき集めれば、必ず答えに辿り着く」
「答えって?」
そう尋ねるも、返ってきたのは安定のニッとした素敵な笑顔。
「自分を強く持て」
オーナーは僕の耳から離れ、ドンと拳を胸に叩きつけてきた。
僕は何のことかよくわからないまま、だけど後々そのアドバイスが何かを導いてくれるように感じて、強く頷いた。
「シュトラントまでの道のり、気を付けろよー」
「うん、色々ありがとう」
僕がオーナーと話している間にロゼアとジルと挨拶をしたらしく、フリュイが僕の横に駆け戻ってくる。
オーナーとロゼアが僕らに大きく手を振る。
ジルはその後ろで恭しく綺麗にお辞儀をした。
彼らがカフェの中に入るのを見届けて、僕らは顔を見合わせた。
「行こっか」
先に口を開いたのはフリュイだった。
カフェに背を向けて、フリュイに口角を上げた笑みを見せた。
それは、作り上げたもののようで。
フリュイがそれに気付いている気がしながら、それでも僕は笑みを浮かべた。
フリュイとの別れが、刻々と迫っているのを感じながら。