瑠璃色の姫君
「もーバベルったら遅いー」
だいぶ前を進んでいたフリュイがわざわさ戻ってきてくれて、僕の手を握った。
「しょうがないから同じ速さで歩いたげる。頑張って歩いてよね」
ふんっ、と頬を膨らませるフリュイ。
ツンツンしているのは変わらず健在である。
その様子に、自然と口元が緩み、笑みがこぼれる。
フリュイが絡めてきた手を、僕はじっと見てから、その手をぎゅっと握った。
「ねーバベル」
「んー」
「フリュイがフリュイじゃなくなっても、がっかりしないでね?」
繋がった手が、ゆらゆらと揺らされる。
「何だそれ、そんな予定があるのか?」
「さあーどうだろね?」
ふふっ、とフリュイが企んでいるような顔をする。
何のことやら。
とにかく。
「フリュイはフリュイじゃなくなっても、フリュイだよ」
それは変わらない。
「何があっても変わらず、僕にとって大事な相棒なんだから」
フリュイの顔を見てそう断言すれば、フリュイは口を一文に結んだのが見えたと思ったら、すぐに下を向いてしまう。
揺らされていた手はピタリと止まってしまった。