瑠璃色の姫君
「あれ、フリュイ?」
反応が無いことを不思議に思って、繋がれた手を引いて立ち止まる。
そのせいでフリュイの体が前のめりになって、おっとっと、と後ろに傾くのを支える。
「………!」
そして下を向くその顔を覗き込み、その表情に、言葉を失った。
「フリュイ……泣いてるの?」
やっとのことで確認の如く言った言葉に、フリュイは体をビクリと震わせて目元をゴシゴシと拭った。
「なーに言ってんの、そんなわけ…」
顔を上げてヘラッと笑うフリュイの目を見る。
「隠すな」
まっすぐに見つめたから、フリュイの瞳に真剣な顔の僕が映っているように見えた。
「………っ、バベルのせいだよっ」
また潤んでくる桜色の瞳が、僕を睨みつける。
だけどその瞳には、いつものような威力が感じられなくて。
フリュイの頭を触って、少し撫でた。
「バベルのばかぁ……っ」
すると、次から次へと溢れ出る涙を拭うこともせずに、フリュイが抱きついてきた。
「決めてる人としかハグしないんじゃなかった?」
僕はそれを受け止めて、フリュイの背中を撫でながら、憎まれ口を叩いてみる。
そうしなくちゃ、レティシアに悪い気がした。